麻雀リハビリ

 私の入院していたリハビリ病院では食事はフロアごとに集合で食べるシステムでしたが、私のいた2階で同じテーブルになったKさんと、毎日の会話の中でのこと。


 「作業療法の部屋に麻雀牌があるの知ってました?」
と私が切り出し、麻雀やりたいねという話になりました。
同じテーブルのOさんにも聞きましたが、出来ないとのことでさてどうしようとなり頓挫しかけました。
「1階に若い方いらっしゃいますよ。最近ちょこちょこ話すです。ちょっとリクルートしてみます。」と言う事で、翌日1階のTさんに声をかけました。
「ぜひやりましょう」と話しが進みましたが、問題は道具です。訓練用の麻雀牌を持ち出す訳にはいかず、何かないかと楽天で検索です。ありました。3/4サイズ麻雀セットなんと破格の¥1,000です。すぐにポチっと押して購入です。毎日仕事帰りに来てくれる家内に話して着いたら持って来てくれるように頼みました。


 数日後物が届きました。会場は私の部屋です。部屋にはテーブルとソファがあった為その上にタオルを敷いて簡易な雀卓にしました。


 メンバーはKさんとTさんと私。KさんTさん共に40代前半で私と同じ脳梗塞。Tさんは7年前にも発症しており出戻りです。Kさんと私は右の片麻痺で、Tさんは2度目なので両足がダメージ。ですが両手はすこぶる調子いい。同じような場所の梗塞ですが、症状は本当にバラバラなんですね。


 テレビを見ながらという事と手がイマイチなので牌を並べるのも時間かかります。Kさんと私はソファに座りますが、Tさんは車いすのままです。途中で「ちょっとタンマ」と言って腰を伸ばしたり、まぁ本当に障害者同士は面倒くさいです。


 男3人なのでロクな話しもしません。〇〇さん(病院スタッフ)は巨乳だとかあの子は胸が無いとか。何が食べたいとか、まぁまともな大人がする会話じゃないです。中学生レベルの会話です。


 でもその感覚のせいで、お互いに症状や病状についてあけすけに質問しあったり、興味本位なんだけどと言いつつそんな話が出来たのでリアルな情報交換でした。生活やお金や仕事、介護保険とか本当に良い情報交換の場でした。


 その後外泊の時に100円ショップで材料を集め麻痺した手で折り畳み式の麻雀マットを作成しました。渾身の作です。折り畳み式にしたのは病院に戻る時に持っていくのが恥ずかしいからです。利便性ではありません。人間の欲望というか、欲望を持った人間の衝動とは我ながら大したものだと思いました。手の状態が良くなくて、カッターも使うのに苦労している状態なのに作ってしまえるのですから。まぁ何でもリハビリです。

 Kさんが退院するまでの間、夕食後から消灯までの2時間、私の部屋は麻雀部屋となりました。