ADL向上

 さて、8月も3週目になった頃、いよいよ車いすとオサラバ出来る時がやって来ました。私が歩行を許されていたのは病室の中と、病室の脇にあるトイレまででした。私の病室は2階で、1階のリハ室までは車いすでしたがそれも終了です。


 車いすという物は、片麻痺だとちょっと使い辛いのです。右足はステップに乗せて、左手と左足を使って操作する感じです。必然的に右曲がりになる感じです。それも終わりです。さようなら車いす。


 そうなると私のメインのモビリティは足と言うことになります。私は入院生活をしてからTEVAのサンダルを愛用していました。ただこいつも麻痺のある足にはそれほど優しい履物ではありあせん。どうしても右足つま先を「ビッ」と床に引っ掛けてしまい、ちょいちょいよろけてしまうのです。これは未だにかわりませんけど。


 リハビリの時はスニーカーでやります。身体がこうなってからよくわかりましたが、スニーカーというのは本当に楽に歩けるように作られているのですね。歩けるというか走れるといった方が良いでしょうか。


 走ると言えば、部屋の中で、今走ったらどんな感じかちょっと試してみたのですが、ぜんぜん走れなくて驚きました。ふざけているみたいに足が動かないのですね。別に全力疾走ってわけではないのに走れない。これは新たな経験です。歯がゆいというか、もどかしいというか、不思議な感覚でした。


 知り合ったKさんは、夜に自主練をされていました。担当のPTに廊下を5周程度の歩行は許可が出ていたようです。私も自主練をしたくて担当のPTさんに伺い、やっても良い事になりました。でもいざやってみると、うまい具合に身体が動かず、鏡でチェックすると右の肩は下がっているし、これは続けてもしょうがないなと自主練を早々に終了なんてことも多々ありました。正しく出来なければやらないというルールを課しました。


 丁度この頃、作業療法で担当のOTの方がSTEFをやってくれました。STEFとは上肢機能検査で機能をスコア化するものです。私のスコアは69点で、80歳以上の最低点もしくは4歳の平均以下といった上肢の機能です。担当からは次の目標は75点と言われました。手先の器用さには自信があったのですが、回復はまだまだだなといったところでした。


 発症から3週間ほどで私が出来るようになったのは、トイレ、お風呂、食事は自立、STEF69点、院内車いすなし、杖なし歩行。出来ないことはまだ山ほどありましたが、自分の意志である程度の事は出来る状態になりました。なんせ初めてのことなので、進捗が良いのか悪いのか分かりませんが、とりあえず前進している感じでした。